top of page

「帰りたかった故郷へ。鍼灸がつないだ終末期の1ヶ月

  • kazzh14
  • 3 日前
  • 読了時間: 3分

畳敷きの和室に低い木製テーブルが置かれ、柔らかな自然光が緑のカーテン越しに差し込む。壁際には小さな家電棚とエアコンがあり、落ち着いた雰囲気の中に静けさと温もりが漂う。終末期を穏やかに過ごすための、故郷の一室。
“こさ来たくて来たくて”──その気持ちに応える場所がここに。丁寧に生きてきた私の最後の大切な時間。

 いやーこさ来たくて来たくて。先生に治療してもらいだいど、ずーっと思ってだ。」

肝臓癌と向き合う80代の女性が、最期の1ヶ月を故郷で過ごすことを選びました。

鍼灸は、痛みや不安を和らげ、日常のリズムを取り戻すための大切な支えとなりました。

望む場所で、望む時間を生きるために──終末期ケアにおける鍼灸の役割を紹介します。



■ 経過と鍼灸治療の経緯

この女性は、9年前に大腸癌の内視鏡手術を受けた後、肩こりや膝痛を訴えて当院に来院。

ご主人を肝臓癌で亡くされて以来一人暮らしを続け、薬に頼らず体調管理をしたいという思いから、10年間にわたり鍼灸治療を継続されていました。

定期的な検査で再発は見られませんでしたが、1年前のエコー検査で肝臓に腫瘍が発見され、抗がん剤治療が開始されました。

鍼灸は、膝・腰・肩の痛み、めまいやふらつきなどに対して継続され、副作用もなく日常生活を維持できていました。


■ 故郷への帰郷とターミナルケアの開始

CT検査で癌の進行が確認され、余生を息子さんの家で過ごすために米沢を離れました。

しかし翌年5月、「思いのほか経過が良かったので、もう一度故郷で暮らしたい」とのご本人の希望で、1ヶ月間の予定で米沢に帰郷。

半年ぶりの来院時には、「先生に治療してもらいだいど」と笑顔で語られ、慣れない土地での孤独な生活が不本意だったことが伺えました。

主治医の了承を得て、数日おきに来院いただきながら**鍼灸による終末期ケア(ターミナルケア)**を開始。

初診では左手の動きに不自由がありましたが、麻痺はなく、刺激量を調整して治療を行いました。


■ 最期まで“自分の暮らし”を支える鍼灸

着物の形見分けや来客対応などで心身ともに疲労が見られ、腰・肩・背中の痛みを訴えられましたが、治療を重ねることで体調は安定。

5診目、6診目には声もしっかりし、日常を取り戻している様子でした。

しかし治療開始から23日目、「急に歩けなくなり3回も転んだ」「食欲がなく舌がザラザラする」との訴えがあり、体温は38.5度。

衰弱が進行していると判断し、主治医に連絡のうえ医院までお送りしました。

翌日入院となり、3週間後に病院で静かに息を引き取られました。

最期まで望んでいた通りに自宅で過ごす時間を支えることができたことに、深い安堵を覚えました。


■ 終末期ケアにおける鍼灸の可能性

この症例は、癌の終末期でも鍼灸が日常生活の質(QOL)を支える医療であることを示しています。

痛みや不安の緩和だけでなく、「自分らしい時間を過ごす」ための選択肢として、鍼灸は大きな役割を果たします。

コメント


カテゴリーメニュー

bottom of page