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検査値は正常でも進行する肝臓の腫れ ― 数値のトリックを見抜いた肝腫大の症例

  • 4月9日
  • 読了時間: 3分

更新日:1 日前

医師がベッド上の患者の腹部を押して診察し、患者が痛みを示す表情をしているイラスト。
腹診で肝臓の腫れに気づく医師と、痛みを訴える患者の様子を描いたイラスト。

背中の苦しさと全身倦怠感 ― 腹診で見つかった肝臓の腫れ


「背中が苦しい」と訴える中年男性が来院した。


身体のだるさも訴える。腹を診ると肝臓が腫れている。肋骨の下から指一本分出ている。


普通は肋骨の下に隠れて肝臓を触れることはない。原因は分からないが肝臓に異変が起きているのは確かだ。


「これまでに肝臓を診てもらったことがあるか」と聞いたら、


「以前から肺疾患で内科に通院していて、血液検査の結果を聞きに3日後に受診予定だ」という。


「なら、その時に肝臓を触診してもらうように」と言って背中の治療をした。


「検査は正常だから大丈夫」――触診されないままの肝臓


2回目に来院したときに、「医者にお腹を触ってもらったか」聞くと、


「胸に聴診器を当てただけで、肝機能は正常範囲で大丈夫だと医師に言われ、お腹は触ってもらえなかった」と言う。


再度腹診をすると、腫れが指二本分になっている。


「腫れが増しているからもう一度診てもらった方がいい」と話すと、


「一週間後2回目の血液検査の結果が出るので、そのとき頼んでみる」と言って帰って行った。


二度の正常値に意地を張る医師― 聞き入れられない患者の訴え


3回目の来院の際話を聞くと、「2回目の検査も正常だったから腹を見る必要はない」と言われたそうだ。


鍼師の指示で腹を診てもらいたいと言い張る患者さんに、担当医が意固地になっているようだ。


しかし、患者さんの肝臓の腫れはすでに指三本分にもなっている。


こんなに急激に肝臓が腫れるのを私は見たことがない。緊急事態だ。


腫れ続ける肝臓 ―「何が何でも触ってもらえ」


おそらく、肝臓の細胞がみんなやられて、見かけ上肝機能の数値が正常域に入ってしまったのだろう。


以前病院研修時代に教わった事が、実際目の前で起きているようだ。とても検査数値を信じてなどいられない。


そこで、血液検査で肝機能が正常値を示すからくりを説明し、「すぐに医者の所に行って、お腹を突き出して何が何でも触ってもらいなさい」と説得した。


触れた瞬間に変わった医師の顔色 ―「済まないがすぐ入院してくれ」の一言


数日後患者さんから電話が入った。


今病院に入院しているという。


私に言われたとおりお腹を突き出して腹診を要求したら医師は渋々それに応じ、触った瞬間に顔色が変わって「済まないがすぐ入院してくれ」と言われたそうだ。


患者さんは憤懣やるかたないと言った口調で事の次第を報告してくれた。


数値だけを信じ患者の訴えをしりぞける危うさ


病気を見つけるのは簡単ではない。


だから、余計な先入観や偏見、愚かな自尊心など持っていたのでは正しい判断が出来なくなる。


検査数値だけを信じて意地を張った結果困らされるのは弱い患者さんだ。


とは言え、今になって思えば、ちゃんと紹介状を書いていればこんなことにはならなかっただろうと反省している。


「鍼師ごときが」と思われることを想定していなかったのは失敗だった。

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