【初公開】ゴルフで起きた頚肩腕痛の臨床推論を全解説|鍼灸師の頭の中
- 2 時間前
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1. 17日後にピークを迎えた痛み
「先生、肩が痛くて夜も眠れないんです。
肩甲骨の内側から胸のあたり、腕の外側までズキッと走って、手のひらもしびれます。
3週間前にゴルフをしたんですが、痛みがひどくなったのは4~5日前なんです。」
50代の男性がそう言って来院した。
ゴルフのやりすぎで肩を痛めるのは珍しくない。
しかし——痛みのピークが“ゴルフから17日後”というのは、どうにも解せない。
2. タイムラグから行動を推理
「ゴルフの翌日や翌々日はどうでした?」
「大したことなかったんです。痛くなったのは最近です。」
「その間、打ちっぱなしとか練習は?」
「仕事が忙しくて何もしてません。」
となると、途中で何かが起きている。
「ゴルフの後、少しは違和感あったんじゃないですか?」
「ええ。首の付け根が苦しいような感じはしてました。でも、それぐらいで、こんなに酷くなるんですかね?」
「気になって、首や肩を回したり、揉んだりしませんでした?」
「……しました。やると気持ちいいもんで、つい。」
——やはり。
炎症が起きているところに刺激を重ねれば、火に風を送るように悪化する。
17日後のピークの謎は、ここでひとつ解けた。
3. 痛みに関係する要素をすべてチェック
「首を上下左右と、ぐるっと回して見せてください。」
「首ですか?痛いのは肩なんですが……。」
患者は不思議そうにしながら動かす。
右へ傾けると肩に痛みが流れ、
右へ振り向くと腕の外側に電気が走る。
ぐるっと回して右斜め後ろに来た瞬間、すべての症状が再現された。
さらに頚椎を押すと、右側に強い圧痛。
——可動域の狭さ、放散痛、圧痛。
ここまで揃えば、頚椎の変形が関わっていると考えない理由はない。
ただし、変形自体は“昔からあるもの”。
今回だけ症状が悪化した理由が、まだ残っている。
4. スイングの癖は身体を診ればわかる
ゴルフスイングは、目線を固定したまま体幹を回す。
そのねじれ動作は、首に負担をかける。
そこで、私は少し踏み込んだ質問をした。
「最近、飛ばなくなってません?」
「そうなんですよ。年のせいですかね。飛距離を出すように頑張って練習してるんですがね。……なんで先生、飛ばなくなったのわかるんですか?」
「まあまあ、謎解きは治療の後でって言うじゃないですか。」
患者は首をかしげた。
5. 次のゴルフの予定気にしてますよね
あらかた謎が解けたので、
「次のゴルフの予定、来週末あたりですか」と聞いた。
「……いやだなー。何でも言い当てられると気持ち悪いですよ。
このままだと行けないかもしれないので、ダメなら早く返事しなきゃいけないんです。
来週まで治りますかね。」
6. 治療の見通し
「私の見立てが合っていれば、最短3週間です。
だから来週は無理です。1ヶ月空けてもらえれば間に合うと思いますよ。」
「だめか……。」
患者は諦め、私の指示に従うことにした。
7. 20日で仕上げる
治療は、頸・背中・肩から腕まで広範囲にわたった。
痛みに関係する場所を、もれなく整えていく。
翌日には痛みは半分に。
5回目で一割まで減り、20日間で8回の治療を終える頃には、
患者はすっかり元気になっていた。
「先生、また痛くならないためには何を気を付けたらいいですか?」
「まずは飛距離にこだわりすぎないことですね。
スイングの力みを取る練習をお勧めします。
それと、首や肩に違和感を感じたら、市販のシップを貼って2~3日いじらないこと。
それでダメなら治療にいらしてください。」
8. 最後の“謎解き”臨床推論
帰り際、患者さんが思い出したように聞いてきた。
「先生、なんでいろいろ言い当てられるんですか?」
「別に占い師みたいなことをして驚かそうとしてるんじゃないんですよ。
僕らは“臨床推論”と言って、患者さんの訴えから想定できる病態を推理し、
問診や身体診察を重ねながら答えを導き出す作業をしているんです。
言い当てているように見えるのは、推論が合っているかどうかの確認なんです。」
「鍼灸も科学的にやってるってことなんですね。」
「ようやく、それができるところまで進歩してきたんですよ。
まだまだ、わからないことはいっぱいありますけどね。」
患者は満足そうにうなずき、治療院を後にした。
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