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寝返りのたびに天井が回る…「良性頭位めまい」だけでは説明のつかない 60代女性「複雑系めまい」の謎解き臨床推論

  • 23 時間前
  • 読了時間: 6分
ベッドに横たわり、片手で額を押さえて苦悶の表情を浮かべる女性の絵画風イラスト。彼女の頭の周りには、視界がぐるぐると回っていることを示す白い同心円状の線が描かれています。
激しいめまいで起き上がることが困難な様子。視界が回るような感覚と強い不快感を表現。

寝返りで起きる強いめまいが数年前から続く60代女性

数年前、寝返りを打った瞬間に、天井がぐるぐる回るような強いめまいに襲われました。

その後も毎年冬になると症状が悪化し、2年前からは、日中もふわふわと揺れているような感覚が続くようになりました。

耳鼻科では「耳石によるめまい」と説明され、耳石を三半規管から戻すための治療(頭位治療)も受けましたが、

  • その場では少し楽になる

  • しかし、しばらくするとまた同じようなめまいが出てしまう

ということを何度も繰り返していました。

「発作のたびに薬を飲んで横になるしかない」そんな状態が続き、外出も怖くなっていました。知人に当院を紹介されて来院されました。


症状を悪化させる要因が複数重なっていた

詳しくお話をうかがうと、めまいを悪化させる要因がいくつも見つかりました。

  • 認知症のお母さまの介護による精神的負担

  • 「どうしたらいいのか…」と立ち止まるほどのストレス

  • 肩こり・高血圧・不眠

  • 首肩の強い緊張

  • 耳石が細かく砕けて三半規管内に浮遊していると考えられる症状

これらが複雑に絡み合い、めまいが「耳だけの問題」ではなく、心身全体の問題として慢性化していたと考えられました。


「耳石めまい」のはずなのに、なぜ何度も繰り返すのか

教科書的には、耳石が三半規管に迷い込んで起こるめまいは、正しい方法で耳石を元の場所に戻せば、一度でおさまるはずです。

ところが、現実にはこの方のように、

  • 耳石の治療を何度も受けているのに

  • 毎年のように、あるいは季節ごとに

  • 同じようなめまいを繰り返す

という方が少なくありません。

ここで一つ、大きな疑問が生まれます。

そもそも、耳石はなぜはがれるのか。

はがれた耳石は、その後どうなるのか。

実は、この点については、医学書にもはっきりとした説明がほとんどありません。


耳石は「一粒」ではなく、「砂」のように砕けていくのではないか

耳の断面図のイラスト。外耳道から奥にある三半規管が黄色く強調され、その中に青い粒状の「耳石」が入り込んでいる様子が赤枠で囲まれています。「三半規管」と「耳石」という日本語のラベルが付いています。
耳の構造図。三半規管(さんはんきかん)と、めまいの引き金となる耳石(じせき)の位置関係。

耳石について書かれた一部の本には、

はがれた耳石は、やがて砕けて細かくなり、体に吸収されていく

という説明があります。

この考え方を頭に置きながら、この患者さんの症状をあらためて観察してみると、ある特徴が見えてきました。

  • 日中、動いているときは強いめまいは出ない

  • じっと寝ていたあとに動こうとした瞬間に、強いめまいが出ることが多い

ここから、次のように推察しました。


はがれた耳石は、一つの塊ではなく、

砕けて「砂」のようになってリンパ液の中に浮いているのではないか。

日中、体を動かしているあいだは、その砂がバラバラに散らばっていて、バランスを感じるセンサー(三半規管)に大きな影響を与えない。

ところが、長くじっとしていると、その砂が一か所に沈殿して「小さな塊」のようになり、体勢を変えた瞬間に、その塊が一気に動いてめまいを起こすのではないか。


耳石が「一粒」ではなく、砕けた砂が沈殿したり、また散ったりしていると考えると、

  • 「寝返りのときだけ強いめまいが出る」

  • 「日中はふわふわする程度」

といった症状の説明がつきやすくなります。


「動かないほうが安全」ではなく、「怖がらずに動いたほうが落ち着いていく」

多くの患者さんを診ていて気づいたことがあります。

耳石によるめまいを「怖がらずに、できる範囲で普段どおり動いている人」は、いずれめまいを起こさなくなっていくことが多い。


逆に、

「めまいが怖くて、なるべく動かないようにしている人」は、少し動いただけで、いつまでもめまいが出やすい状態が続くことが多い。


この患者さんにも、耳石の仕組みと上の仮説をかみ砕いて説明しました。

「耳石は、じっとしていると一か所に沈んで塊になりやすい。でも、寝返りを多めに打っていると、砂がバラバラに散って、かえってめまいを起こしにくくなるはずです。」


そこで、

  • めまいを必要以上に怖がらないこと

  • 寝ているあいだも、むしろ意識して寝返りを多めに打つこと

を提案しました。

すると、その後は強いめまい発作が起こらなくなりました。


めまいの原因は「一つ」ではなく、いくつかの要因が重なっている

ベッドで頭を押さえて悩む女性のイラスト。頭上には3つの吹き出しがあり、左には「三半規管に入り込んだ耳石」の図解、中央には「枕」、右には「混乱した思考」が描かれています。女性の肩には鋭い痛みや衝撃を示す黄色い稲妻のマークが添えられています。
 めまいの原因と日常生活への影響。内耳の「耳石」の乱れが、起床時や就寝時の激しい回転性めまいや不安感を引き起こすイメージ図。

ここで、もう一つ大事なポイントがあります。

この方のめまいは、

  • 耳石の問題(耳の中のバランスセンサー)

  • 介護ストレスによる心理的な緊張

  • それに伴う首肩の強いこり

  • 高血圧・不眠といった全身状態の乱れ

といった複数の要因が同時に重なって起きていたと考えられます。

心理的な緊張が続くと、首や肩の筋肉がガチガチにこり、血流や神経の働きが悪くなります。

首には、体のバランスに関わるセンサーも多く存在するため、首肩のこり自体が、めまいを誘発・増悪させる要因にもなります。

つまり、

めまいの原因は「耳」だけではなく、耳石・首肩の状態・自律神経・ストレス・睡眠などが複雑に絡み合っていることが多いのです。


鍼灸がめまいに向いている理由

この方には、次のようなアプローチを行いました。

  1. 鍼治療でガチガチの首肩をゆるめる

    首肩の緊張をゆるめ、血流と神経の働きを整えることで、

    「首からくるめまい」の要素を減らしていきました。

  2. 耳石の特徴を踏まえた寝返りの仕方を指導

    耳石(砂)の動き方を踏まえ、

    「怖がらずに寝返りを増やす」ことを具体的にアドバイスしました。

  3. 介護ストレスへの対応を、経験から助言

    認知症介護の大変さを共有しながら、

    「一人で抱え込まないための考え方」

    「気持ちが少し楽になる視点」

    をお伝えしました。

こうして、耳・首・心身のストレス・生活環境という、めまいに関わる複数の要因を一つずつ整えていった結果、

  • 発作の頻度が減る

  • 日中のふわふわ感が軽くなる

  • 季節による悪化が起きなくなる

といった変化が現れ、現在はめまい発作は起きていません。

笑顔が戻り、今は膝への負担を減らすための減量にも、前向きに取り組めるようになりました。


めまいは「複雑系」だからこそ、鍼灸が活きる

耳鼻科では、どうしても「耳石」「内耳」「前庭」といった、一つの原因に対するアプローチが中心になりがちです。

もちろん、それはとても大切な治療ですが、

めまいの背景には、耳だけでなく、首・自律神経・ストレス・睡眠・姿勢・生活環境など、いくつもの要因が同時に絡み合っていることが少なくありません。


こうした「複雑系」としてのめまいに対して、

  • 首肩の筋緊張

  • 自律神経の乱れ

  • ストレス反応

  • 睡眠の質

  • 体の使い方・動き方

などを同時に、多面的に整えていけるのが鍼灸の強みです。

長年めまいに悩んでいて、

  • 「耳鼻科では異常なしと言われた」

  • 「治療を受けても、また繰り返してしまう」

という方は、

めまいを「耳だけの問題」としてではなく、

体と心と生活全体のバランスの問題として見直してみる

という視点が、改善への大きな一歩になるかもしれません。


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