寝返りのたびに天井が回る…「良性頭位めまい」だけでは説明のつかない 60代女性「複雑系めまい」の謎解き臨床推論
- 23 時間前
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寝返りで起きる強いめまいが数年前から続く60代女性
数年前、寝返りを打った瞬間に、天井がぐるぐる回るような強いめまいに襲われました。
その後も毎年冬になると症状が悪化し、2年前からは、日中もふわふわと揺れているような感覚が続くようになりました。
耳鼻科では「耳石によるめまい」と説明され、耳石を三半規管から戻すための治療(頭位治療)も受けましたが、
その場では少し楽になる
しかし、しばらくするとまた同じようなめまいが出てしまう
ということを何度も繰り返していました。
「発作のたびに薬を飲んで横になるしかない」そんな状態が続き、外出も怖くなっていました。知人に当院を紹介されて来院されました。
症状を悪化させる要因が複数重なっていた
詳しくお話をうかがうと、めまいを悪化させる要因がいくつも見つかりました。
認知症のお母さまの介護による精神的負担
「どうしたらいいのか…」と立ち止まるほどのストレス
肩こり・高血圧・不眠
首肩の強い緊張
耳石が細かく砕けて三半規管内に浮遊していると考えられる症状
これらが複雑に絡み合い、めまいが「耳だけの問題」ではなく、心身全体の問題として慢性化していたと考えられました。
「耳石めまい」のはずなのに、なぜ何度も繰り返すのか
教科書的には、耳石が三半規管に迷い込んで起こるめまいは、正しい方法で耳石を元の場所に戻せば、一度でおさまるはずです。
ところが、現実にはこの方のように、
耳石の治療を何度も受けているのに
毎年のように、あるいは季節ごとに
同じようなめまいを繰り返す
という方が少なくありません。
ここで一つ、大きな疑問が生まれます。
そもそも、耳石はなぜはがれるのか。
はがれた耳石は、その後どうなるのか。
実は、この点については、医学書にもはっきりとした説明がほとんどありません。
耳石は「一粒」ではなく、「砂」のように砕けていくのではないか

耳石について書かれた一部の本には、
はがれた耳石は、やがて砕けて細かくなり、体に吸収されていく
という説明があります。
この考え方を頭に置きながら、この患者さんの症状をあらためて観察してみると、ある特徴が見えてきました。
日中、動いているときは強いめまいは出ない
じっと寝ていたあとに動こうとした瞬間に、強いめまいが出ることが多い
ここから、次のように推察しました。
はがれた耳石は、一つの塊ではなく、
砕けて「砂」のようになってリンパ液の中に浮いているのではないか。
日中、体を動かしているあいだは、その砂がバラバラに散らばっていて、バランスを感じるセンサー(三半規管)に大きな影響を与えない。
ところが、長くじっとしていると、その砂が一か所に沈殿して「小さな塊」のようになり、体勢を変えた瞬間に、その塊が一気に動いてめまいを起こすのではないか。
耳石が「一粒」ではなく、砕けた砂が沈殿したり、また散ったりしていると考えると、
「寝返りのときだけ強いめまいが出る」
「日中はふわふわする程度」
といった症状の説明がつきやすくなります。
「動かないほうが安全」ではなく、「怖がらずに動いたほうが落ち着いていく」
多くの患者さんを診ていて気づいたことがあります。
耳石によるめまいを「怖がらずに、できる範囲で普段どおり動いている人」は、いずれめまいを起こさなくなっていくことが多い。
逆に、
「めまいが怖くて、なるべく動かないようにしている人」は、少し動いただけで、いつまでもめまいが出やすい状態が続くことが多い。
この患者さんにも、耳石の仕組みと上の仮説をかみ砕いて説明しました。
「耳石は、じっとしていると一か所に沈んで塊になりやすい。でも、寝返りを多めに打っていると、砂がバラバラに散って、かえってめまいを起こしにくくなるはずです。」
そこで、
めまいを必要以上に怖がらないこと
寝ているあいだも、むしろ意識して寝返りを多めに打つこと
を提案しました。
すると、その後は強いめまい発作が起こらなくなりました。
めまいの原因は「一つ」ではなく、いくつかの要因が重なっている

ここで、もう一つ大事なポイントがあります。
この方のめまいは、
耳石の問題(耳の中のバランスセンサー)
介護ストレスによる心理的な緊張
それに伴う首肩の強いこり
高血圧・不眠といった全身状態の乱れ
といった複数の要因が同時に重なって起きていたと考えられます。
心理的な緊張が続くと、首や肩の筋肉がガチガチにこり、血流や神経の働きが悪くなります。
首には、体のバランスに関わるセンサーも多く存在するため、首肩のこり自体が、めまいを誘発・増悪させる要因にもなります。
つまり、
めまいの原因は「耳」だけではなく、耳石・首肩の状態・自律神経・ストレス・睡眠などが複雑に絡み合っていることが多いのです。
鍼灸がめまいに向いている理由
この方には、次のようなアプローチを行いました。
鍼治療でガチガチの首肩をゆるめる
首肩の緊張をゆるめ、血流と神経の働きを整えることで、
「首からくるめまい」の要素を減らしていきました。
耳石の特徴を踏まえた寝返りの仕方を指導
耳石(砂)の動き方を踏まえ、
「怖がらずに寝返りを増やす」ことを具体的にアドバイスしました。
介護ストレスへの対応を、経験から助言
認知症介護の大変さを共有しながら、
「一人で抱え込まないための考え方」
「気持ちが少し楽になる視点」
をお伝えしました。
こうして、耳・首・心身のストレス・生活環境という、めまいに関わる複数の要因を一つずつ整えていった結果、
発作の頻度が減る
日中のふわふわ感が軽くなる
季節による悪化が起きなくなる
といった変化が現れ、現在はめまい発作は起きていません。
笑顔が戻り、今は膝への負担を減らすための減量にも、前向きに取り組めるようになりました。
めまいは「複雑系」だからこそ、鍼灸が活きる
耳鼻科では、どうしても「耳石」「内耳」「前庭」といった、一つの原因に対するアプローチが中心になりがちです。
もちろん、それはとても大切な治療ですが、
めまいの背景には、耳だけでなく、首・自律神経・ストレス・睡眠・姿勢・生活環境など、いくつもの要因が同時に絡み合っていることが少なくありません。
こうした「複雑系」としてのめまいに対して、
首肩の筋緊張
自律神経の乱れ
ストレス反応
睡眠の質
体の使い方・動き方
などを同時に、多面的に整えていけるのが鍼灸の強みです。
長年めまいに悩んでいて、
「耳鼻科では異常なしと言われた」
「治療を受けても、また繰り返してしまう」
という方は、
めまいを「耳だけの問題」としてではなく、
体と心と生活全体のバランスの問題として見直してみる
という視点が、改善への大きな一歩になるかもしれません。
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