多発性脳梗塞と誤診された72歳女性|脊髄小脳変性症の発見につながった鍼灸治療の症例
- 3月27日
- 読了時間: 3分

1|酔ったようにふらつく歩行で来院した72歳女性
ある日、娘さんに抱えられ、まるで酔っているかのようにふらつく歩き方の72歳女性が来院しました。
自力で立つことも難しく、動作は極端にゆっくり。目は上転したまま下を見ることができず、口はほとんど開かず、声はうめき声のようにしか出ません。
食事中は何度もむせ、仰向けに寝ると唾液を誤嚥しそうになるほど嚥下機能が低下。
さらに強い不安から家族を片時も離さず、介護する娘さんの心身は限界に達していました。
2|4年前から転倒が増え、入院後に急激に悪化
症状の始まりは4年前。転びやすくなり、1年後には転倒して右鎖骨を骨折。
入院をきっかけに、歩行・言語・動作が急激に悪化したといいます。
その後、病院で 「多発性脳梗塞」 と診断されリハビリを開始しましたが、症状は日々悪化。
家族は診断に疑問を持ち、米沢市内の病院をすべて回ったそうです。
3|埼玉の医院での治療と、当院への受診
そんな中、埼玉に「総合医学」を標榜する開業医がいると知り、
毎月10日間泊まり込みで以下の治療を受けていました。
• 後頭部の鍼
• アルカリ水を飲みながらの1時間全身浴
• 点滴
• 運動療法
これにより、動作や目つきが改善したと感じていたとのこと。
3ヶ月通ったところで、米沢滞在中のつなぎとして当院を受診されました。
4|多発性脳梗塞では説明できない症状から「小脳疾患」を疑う
初診時の所見は以下の通りでした。
• 酔ったようなふらつき(失調性歩行)
• 眼振(目の震え)
• 麻痺ではなく「動作がスムーズにできない」失調
• 嚥下障害
• 構音障害
これらは 多発性脳梗塞では典型的ではなく、小脳疾患を強く示唆する症状 でした。
来院のたびに脳神経系の所見を丁寧に取り、疾患の絞り込みを進めました。
5|毎日4ヶ月の鍼治療とリハビリで大幅に改善
当院では、定休日以外 毎日4ヶ月間、鍼治療とリハビリを継続。
その結果、以下の改善が見られました。
• 立位保持:数秒 → 5分
• 歩行距離:10m → 50m
• 嚥下機能の改善
• ベッド上での起き上がりが自立
• 食事・着替えの介助が不要に
• 便通改善
• 起きていられる時間が増加
• 相撲観戦ができるほど意欲が回復
精神的にも安定し、いつの間にか埼玉の医院へ行く必要がなくなりました。
6|脳神経所見を添えて紹介状を作成 → 正しい診断へ
当院で蓄積した神経所見を添えて市内病院へ紹介したところ、
CTで 脊髄と小脳の萎縮 が確認され、
正式に 脊髄小脳変性症(SCD) と診断。
以前の「多発性脳梗塞」は誤診であったと医師から謝罪がありました。
7|その後の経過と治療の意義
病院での薬物療法と併用しながら1年間治療を継続。
立位・歩行・眼球運動の悪化は遅らせることができ、
食事・嚥下・寝起きなどの動作は安定しました。
1年を過ぎて進行が強まり入院となりましたが、
介入した1年間で以下の大きな成果がありました。
■ 介入による4つの大きな効果
1. 構音障害で伝わらなかった言葉を丁寧に拾い、知能・感情が正常であると家族が理解し、本人の心理が安定した。
2. 毎月の埼玉通いが不要になり、家族の負担が軽減。
3. 地元で正しい診断がつき、医療の受け皿ができた。
4. 身体機能が改善し、介護負担が大幅に減った。
最終的に病気の進行は止められませんでしたが、
「地獄のような日々」に終止符を打てたことは大きな意味があった と感じています。
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